#7「」

寄稿者:中島ゆう子(写真家)

“ベルリン”と聞いてまず思い浮かぶものは何だろう。

国会議事堂、ブランデンブルク門、ベルリンの壁、クラブハウス、アート、金熊賞、ハンザフィアテル、ベルリンフィルハーモニー、テレビ塔。どれもドイツの歴史やベルリンカルチャーを代表するものだが、私は戦勝記念塔(Siegessäule)がまず浮かぶ。ゴールドエルサのニックネームを持つ勝利の女神ヴィクトリアは、5本の大きな道路の中心に立つ塔の上で、堂々と、そして優雅に聳え立ち、⻑い年月ベルリンを見守っている。塔のすぐ近くには Tiergarten(ティアガルテン)という巨大な公園があり、ここは私のお気に入りのお散歩スポットだ。
ベルリンは緑豊かな首都であり、木々や川、湖などが数多く存在するが、その中でもティアガルテンは街の中心部にありながら、ウサギやきつね、リスなどの多くの野生動物が住み着く、“動物の庭”だ。ティアガルテンの中を歩き、風の音に耳を傾ける。そして、ふと空を見上げると、そこにはいつもゴールドエルサが輝いている。映画のように、天使カシエルが戦勝記念塔からベルリンの街をそっと見つめているのではないかと思い、カメラのファインダーを覗いてみるが、そこには微笑みながらそっと立っている彼女しかいなかった。

 

 


Profile

中島ゆう子 / 写真家・ビジュアルアーティスト

日本大学芸術学部写真学科卒業後、坂田栄一郎氏に師事する。 過去と現在、個人とコミュニティを結びつけ、人間の相互作用、記憶、および精神性に焦点を当てた作品を制作している。 大学時代から一貫して中盤フィルムカメラで撮影を続けている。

曾祖母の箪笥とその記憶をテーマにした作品『A chest』(2015)、イヴ・クラインの言葉から着想を得た「青」をテーマにした作品『The Blue of SAYONARA』(2014-2016)を制作。渡独後、信仰と宗教的表現を現代の視点から写真で再解釈した『The Trinity -place, community and spirituality-』(2017-2021)を制作する。同作品はベルリン(ドイツ)、リガ(ラトビア)、アムステルダム(オランダ)、東京、北海道(日本)で展示されている。 2023年夏に新しいプロジェクト『Thick Forest of Dachgeschoss / ダッハゲショッスの森』をベルリンで発表。

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▼エッセイ「タイトルを持たない写真」について
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▼著者の寄稿文一覧
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