#18「」
寄稿者:中島ゆう子(写真家)

12月のある日、私はベルリンの郊外へ向かった。自宅から電車で1時間ほど行くと、都市と郊外のちょうど中間のような街に着いた。東京生まれの私にとっては、この場所は「ベルリンの郊外」であるけれど、ベルリンの人たちから見たら、まだまだ郊外と呼ぶには早い場所かもれしない。
ここには競馬場の跡地があり、月に一度大きな蚤の市が開催される。冬が深まる1月から3月までは冬季休業に入るため、次にここへ来るのは緑が深まる春頃になるだろう。この日も雪が降っていた。この冬は例年よりも雪の降りはじめが早く、またよく降る。積もった雪の上を注意深く歩いていると、犬や鳥の足跡が目に入った。足を止め、深呼吸をすると澄んだ空気が体内に入り、寒いけれどなんだか心地よい。目の前に広がる木々、そこに美しく積もる雪。寒さには慣れないが、雪の日のベルリンも悪くない、そんなことを考えながら、蚤の市会場へ向かった。
ここには競馬場の跡地があり、月に一度大きな蚤の市が開催される。冬が深まる1月から3月までは冬季休業に入るため、次にここへ来るのは緑が深まる春頃になるだろう。この日も雪が降っていた。この冬は例年よりも雪の降りはじめが早く、またよく降る。積もった雪の上を注意深く歩いていると、犬や鳥の足跡が目に入った。足を止め、深呼吸をすると澄んだ空気が体内に入り、寒いけれどなんだか心地よい。目の前に広がる木々、そこに美しく積もる雪。寒さには慣れないが、雪の日のベルリンも悪くない、そんなことを考えながら、蚤の市会場へ向かった。
Profile
中島ゆう子 / 写真家・ビジュアルアーティスト
日本大学芸術学部写真学科卒業後、坂田栄一郎氏に師事する。 過去と現在、個人とコミュニティを結びつけ、人間の相互作用、記憶、および精神性に焦点を当てた作品を制作している。 大学時代から一貫して中盤フィルムカメラで撮影を続けている。
曾祖母の箪笥とその記憶をテーマにした作品『A chest』(2015)、イヴ・クラインの言葉から着想を得た「青」をテーマにした作品『The Blue of SAYONARA』(2014-2016)を制作。渡独後、信仰と宗教的表現を現代の視点から写真で再解釈した『The Trinity -place, community and spirituality-』(2017-2021)を制作する。同作品はベルリン(ドイツ)、リガ(ラトビア)、アムステルダム(オランダ)、東京、北海道(日本)で展示されている。 2023年夏に新しいプロジェクト『Thick Forest of Dachgeschoss / ダッハゲショッスの森』をベルリンで発表。
▼エッセイ「タイトルを持たない写真」について
https://atsea.day/blogs/journal/yukonakajima-essay-0
▼著者の寄稿文一覧
https://atsea.day/blogs/profile/yuko-nakajima
