#15「」
寄稿者:中島ゆう子(写真家)

ベルリンでは、街のいたるところで犬を見かける。これまで本フォトエッセイでも、たくさんの “Berliner Hund”(ベルリンドッグ)を紹介してきたが、今回はご近所の3匹について綴りたい。
自宅の裏にある静かな通りに、お気に入りのパティスリーがある。友人を招いたときや誕生日会を開くとき、あるいは日常の中で小さな喜びを感じたときなど、特別な日にここのケーキを食べることが、私のちょっとした習慣になっている。
この日はチーズケーキとパッションフルーツのケーキを買い、ケーキの箱を片手にお店のドアを開けると、テラス席に3匹の “お客さん” が佇んでいた。お店へ出入りする人々に興味を示したり、飼い主のケーキを一口もらおうと利口にお座りをしたり、通りを行き交う人々を眺めたり――それぞれの仕草が、まるで私の3匹の愛猫のようだった。三者三様の彼らの姿を、ケーキの箱に気をつけながら、そっとカメラに収めた。
Profile
中島ゆう子 / 写真家・ビジュアルアーティスト
日本大学芸術学部写真学科卒業後、坂田栄一郎氏に師事する。 過去と現在、個人とコミュニティを結びつけ、人間の相互作用、記憶、および精神性に焦点を当てた作品を制作している。 大学時代から一貫して中盤フィルムカメラで撮影を続けている。
曾祖母の箪笥とその記憶をテーマにした作品『A chest』(2015)、イヴ・クラインの言葉から着想を得た「青」をテーマにした作品『The Blue of SAYONARA』(2014-2016)を制作。渡独後、信仰と宗教的表現を現代の視点から写真で再解釈した『The Trinity -place, community and spirituality-』(2017-2021)を制作する。同作品はベルリン(ドイツ)、リガ(ラトビア)、アムステルダム(オランダ)、東京、北海道(日本)で展示されている。 2023年夏に新しいプロジェクト『Thick Forest of Dachgeschoss / ダッハゲショッスの森』をベルリンで発表。
▼エッセイ「タイトルを持たない写真」について
https://atsea.day/blogs/journal/yukonakajima-essay-0
▼著者の寄稿文一覧
https://atsea.day/blogs/profile/yuko-nakajima