#14「」

寄稿者:中島ゆう子(写真家)
我が家のリビングには大きな窓がひとつある。窓の外には大きな木が一本生えていて、この木は静かに、季節の移ろいを私たちに知らせてくれる。
春になると窓の外は鮮やかな緑一色に染まり、まるで森に佇む一軒の小屋の中にいるように気持ちにさせてくれる。夏になると明るい夜空と人々の楽しそうな声が響き渡り、秋になると春の景色が幻だったかのように葉が紅く染まり、一気に季節が深まる。寒く薄暗い冬は、暖を求めてやってきた猫たちと寄り添いながら、空から舞う雪を眺める。この古い二重窓は、季節によって開けづらく、窓と窓の間に雪が積もることもある。窓拭きや結露に悩まされることもあるが、愛猫が外の景色を見つめる姿を目にすると、改めて感じるのだ大きな窓と大きな木のあるこの家が、人生を豊かにしてくれていることを。




Profile

中島ゆう子 / 写真家・ビジュアルアーティスト

日本大学芸術学部写真学科卒業後、坂田栄一郎氏に師事する。 過去と現在、個人とコミュニティを結びつけ、人間の相互作用、記憶、および精神性に焦点を当てた作品を制作している。 大学時代から一貫して中盤フィルムカメラで撮影を続けている。

曾祖母の箪笥とその記憶をテーマにした作品『A chest』(2015)、イヴ・クラインの言葉から着想を得た「青」をテーマにした作品『The Blue of SAYONARA』(2014-2016)を制作。渡独後、信仰と宗教的表現を現代の視点から写真で再解釈した『The Trinity -place, community and spirituality-』(2017-2021)を制作する。同作品はベルリン(ドイツ)、リガ(ラトビア)、アムステルダム(オランダ)、東京、北海道(日本)で展示されている。 2023年夏に新しいプロジェクト『Thick Forest of Dachgeschoss / ダッハゲショッスの森』をベルリンで発表。

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▼エッセイ「タイトルを持たない写真」について
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▼著者の寄稿文一覧
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