#12「」
寄稿者:中島ゆう子(写真家)
ベルリン中央駅は、毎日多くの人で賑わっている。大きなリュックを背負った男女、旅行カバンを持った家族、地図を広げて行き先を確認するカップル、久々の再会を喜ぶ友人たちの輪、トラムやバスに乗り換えるベルリナー。ベルリン中央駅は、国内外からヨーロッパ全土を結ぶ電車が到着する、ベルリンの中でも一番大きく、また一番賑やかな駅だ。ここで壮大なドラマが生まれているかは分からないが、まるで人々の人生が交差するちょっとした瞬間を見ているようだ。空港とは異なる、中央駅に広がるこうした旅の情景が私は好きだ。
最上階にある S バーンのプラットホームで電車を待つ 5 分間、旅人たちの行き先に思いを馳せる― ボストンバッグとリュックを背負った女性の向かう先、スーツケースを引く夫婦の目的地、再会を楽しむ友人たちの次なる旅の計画。彼らを眺めながら、それぞれの物語を想像し、私自身も旅人気分に浸るのであった。
Profile
中島ゆう子 / 写真家・ビジュアルアーティスト
日本大学芸術学部写真学科卒業後、坂田栄一郎氏に師事する。 過去と現在、個人とコミュニティを結びつけ、人間の相互作用、記憶、および精神性に焦点を当てた作品を制作している。 大学時代から一貫して中盤フィルムカメラで撮影を続けている。
曾祖母の箪笥とその記憶をテーマにした作品『A chest』(2015)、イヴ・クラインの言葉から着想を得た「青」をテーマにした作品『The Blue of SAYONARA』(2014-2016)を制作。渡独後、信仰と宗教的表現を現代の視点から写真で再解釈した『The Trinity -place, community and spirituality-』(2017-2021)を制作する。同作品はベルリン(ドイツ)、リガ(ラトビア)、アムステルダム(オランダ)、東京、北海道(日本)で展示されている。 2023年夏に新しいプロジェクト『Thick Forest of Dachgeschoss / ダッハゲショッスの森』をベルリンで発表。
▼エッセイ「タイトルを持たない写真」について
https://atsea.day/blogs/journal/yukonakajima-essay-0
▼著者の寄稿文一覧
https://atsea.day/blogs/profile/yuko-nakajima