#21「」
寄稿者:中島ゆう子(写真家)

遊覧船は、ベルリン中央駅から東へと静かに進んでいく。
シュプレー川から眺める国会議事堂、博物館島、テレビ塔、Mitteエリアの街並み。夕日の美しさも相まって、そのすべてが光り輝いていた。しかし、美しい光景は、儚いGolden hourの光の中で、私の気持ちを置き去りにしたまま、刹那のうちに流れ去っていく。心地の良い川風、街のさざめき、ドイツビールの独特の苦味――夢のような夏の時間を、その全てを忘れたくない、そう強く感じた。
遊覧船はフンボルトフォーラムを迂回し、ふたたび出発した船着場へ向かう。
岸辺に目をやると、中くらいのスピーカーから流れる音楽に身を委ね、人々が楽しそうに踊っていた。途中下車は叶わなかったが、来年の夏は岸辺でダンスをしながら、遊覧船に手を振りたい。
Profile
中島ゆう子 / 写真家・ビジュアルアーティスト
日本大学芸術学部写真学科卒業後、坂田栄一郎氏に師事する。 過去と現在、個人とコミュニティを結びつけ、人間の相互作用、記憶、および精神性に焦点を当てた作品を制作している。 大学時代から一貫して中盤フィルムカメラで撮影を続けている。
曾祖母の箪笥とその記憶をテーマにした作品『A chest』(2015)、イヴ・クラインの言葉から着想を得た「青」をテーマにした作品『The Blue of SAYONARA』(2014-2016)を制作。渡独後、信仰と宗教的表現を現代の視点から写真で再解釈した『The Trinity -place, community and spirituality-』(2017-2021)を制作する。同作品はベルリン(ドイツ)、リガ(ラトビア)、アムステルダム(オランダ)、東京、北海道(日本)で展示されている。 2023年夏に新しいプロジェクト『Thick Forest of Dachgeschoss / ダッハゲショッスの森』をベルリンで発表。
▼エッセイ「タイトルを持たない写真」について
https://atsea.day/blogs/journal/yukonakajima-essay-0
▼著者の寄稿文一覧
https://atsea.day/blogs/profile/yuko-nakajima
