#19「」
寄稿者:中島ゆう子(写真家)

蚤の市の会場に到着すると、あたり一面は真っ白な雪景色が静かに広がっていた。屋外に店はほとんどなく、かつて馬券売り場だった建物で開催されている蚤の市へと、人々がそれぞれの歩幅でゆっくりと歩いていた。
足元に気をつけながら慎重に進んでいくと、小さな肉球の跡と、それに寄り添うような飼い主らしき人の足跡を見つけた。まるで童謡の歌詞のように、この足跡を残した犬もきっと雪の中を楽しげに駆け回っているのだろう。
ふと顔を上げ遠くを見渡すと、白銀の世界の中で、毛むくじゃらのグレーの犬がぴょんぴょんと軽やかに跳ね回っているのが目に入った。自然と足がその犬のほうへ向かう。そばでは、飼い主の女性が温かいコーヒーを片手に、知人と談笑していた。
「この子はオスですか?」、そっと尋ねると、「そうよ。名前はルーク・スカイウォーカーというの」と教えてくれた。
「まるで『スター・ウォーズ エピソードⅤ』の惑星ホスのシーンみたいですね!」
私たちが笑いながら話す様子を、ルーク・スカイウォーカーは不思議そうな表情でじっと見つめていた。
Profile
中島ゆう子 / 写真家・ビジュアルアーティスト
日本大学芸術学部写真学科卒業後、坂田栄一郎氏に師事する。 過去と現在、個人とコミュニティを結びつけ、人間の相互作用、記憶、および精神性に焦点を当てた作品を制作している。 大学時代から一貫して中盤フィルムカメラで撮影を続けている。
曾祖母の箪笥とその記憶をテーマにした作品『A chest』(2015)、イヴ・クラインの言葉から着想を得た「青」をテーマにした作品『The Blue of SAYONARA』(2014-2016)を制作。渡独後、信仰と宗教的表現を現代の視点から写真で再解釈した『The Trinity -place, community and spirituality-』(2017-2021)を制作する。同作品はベルリン(ドイツ)、リガ(ラトビア)、アムステルダム(オランダ)、東京、北海道(日本)で展示されている。 2023年夏に新しいプロジェクト『Thick Forest of Dachgeschoss / ダッハゲショッスの森』をベルリンで発表。
▼エッセイ「タイトルを持たない写真」について
https://atsea.day/blogs/journal/yukonakajima-essay-0
▼著者の寄稿文一覧
https://atsea.day/blogs/profile/yuko-nakajima
