アマルフィ。そこは世界一美しいと言われた港
写真・文=中村風詩人(写真家)
朝起きるとイタリア西海岸の沖合にいた。入港を数十分後に控え、止まってしまいそうなほどゆっくりと船は動いていた。遠くに三日月型のアーチを描いた半島が目に入る。その中心部には一際高い塔が建っていた。その塔を囲むように煉瓦造りの屋根や白壁、遠くの山にはレモン畑のような林が見えていた。錨泊地に到着すると、扇形に広がった街並みは、まるで映画館の丸みを帯びたスクリーンに映された情景のように見えた。
これがアマルフィ… ため息と同時に港の名前を何度も口にした。なんて美しい港だろうか、17年船旅をする中で、これほど感動した港は、アマルフィの他に見当たらない。
寄港地に上陸し、こういう美しい港町に背を向けて、青の洞窟やポンペイ遺跡にいったり、ナポリ観光にでかけたりするのは、少し勿体ない気がする。アマルフィという注目していなかった小さな港町に、こうして出会い迷い込むことが出来たのだ。叶うならマルゲリータとリモンチェッロをテラス席で食べてから歩きたい。石畳の小道を当てもなく巡り、大階段を登って教会に行く。そして今まで船で渡ってきた海を眺めるのだ。きっとその眺めは、何気なく見ていた海よりもずっと広い。そんなイタリア人がしてそうな、大それたことのない休日こそが理想的だ。こんなにも美しい港町、アマルフィに来たのだから。
[写真集『waterline - にっぽん丸の軌跡』 掲載エッセイより]
▼このエッセイの関連商品
オーダープリント作品 / アマルフィ
写真集『waterline - にっぽん丸の軌跡』
▼著者の執筆記事一覧
https://atsea.day/blogs/profile/kazashito-nakamura
Profile
中村風詩人 / 写真家
世界一周、南太平洋諸国一周、東南アジア一周、オセアニア一周、欧州一周、などを旅して2026年現在80カ国以上を撮影。企業や各出版社、省庁、観光局などの撮影を行う。各百貨店や客船上での公演、写真講座、全国フォトツアーや世界旅写真展の審査員なども務める。代表作に世界3周分の海の風景を収めた写真集『ONE OCEAN』出版。海の風景は広島県の切手にも採用。2018年4月に著書『小笠原のすべて』(JTB パブリッシング)を上梓。同出版記念公演は 300人を動員、 展示は銀座・名古屋・大阪キヤノン ギャラリーから宇都宮東武百貨店・高崎高島屋・水戸京成百貨店・仙台メディアテークなど全国を巡回し、のべ10万人が来場した。2018年に7年にわたり撮影を続けた椅子の写真集『本能のデザイン』(実業之日本社刊)、2019年に世界一周をまとめた『OCEAN MEMORIES』(AP 出版)、2025 年に『waterlien ‒ にっぽん丸の軌跡』(AP 出版)を上梓。
