第一回「写真の話」− 写真の選び方とは
寄稿者:中村風詩人(写真家)
審査や展示で写真を選ぶ時に
大切にしていることの話
フォトコンテストの審査員をするとき、たったひとつの大きなルールを決めている。
ときどき、「どうやって写真を選んでいるのですか」とか、「どういう写真が "良い写真" ですか」と聞かれることがある。その時にいつも同じ答えを言っているのだが、思えばそれが写真を選ぶ時に大切にしていることだ。
『その写真を飾っていたいかどうか』。
写真の魅力とは、これに尽きる。もちろん意見は様々あり、これだけが正解ではないが、私は少なくともこのひとつの信念を撮影にも展示にも貫いている。「飾っていたいか」と一言に書いても、それはなんとなく壁を埋める訳ではなくもっと広義にわたる。
まずはその写真の内容の美しさ、それにプリント自体の完成度も飾るためには重要な要素だ。紙の選び方、現像・プリントの方法、また額にいれた姿が鮮明に想像でき、わくわくしてくるもの。「果たして、この写真は長い間ここに飾ったとして、見飽きることなくずっと魅力的で有り続けるか」という価値に他ならない。
不思議なことに完成された作品というのは、いくら見ていても見飽きることがない。それどころか、見る時期が変わると別の魅力を放つようになることさえある。つまるところ、その写真を飾りたいかどうか。
写真を見るにあたって、この価値以上に大切なことを私は思いつかない。
Profile
中村風詩人 / 写真家
世界一周の旅を始め、今まで80か国以上に渡航し、撮影を行なう。森をテーマに個展や東京都美術館でのグループ展にも出展。著書『ONE OCEAN』では、世界3周分の海の写真をまとめた。年間200の写真展に足を運び、現在600冊の写真集、50枚以上のオリジナルプリントを収集するコレクターでもある。審査員を務める世界旅写真展ではこれまで鬼海弘雄氏、石川梵氏など著名な写真家と共にフォトアート作品の普及に寄与してきた。