季節外れの渡り鳥


凍り始めた池の水を見ながら
吹きすさぶ風に唇をきゅっと噛みしめる

ふっと目線を上に向けると
細く伸びた枝の先で
季節外れの渡り鳥が羽を休めていた


「どうしてこんなところにいるの?」
そう訊ねると

「理由がいるのかい?」
そう返事がきた気がした

隣には小さな鳥がもう一羽
離れることのないよう寄り添っている


鳥の渡り方も
人の生き方も
それぞれだ

わたしももっと身軽でいよう

大切なものを守れるように
自分自身を守れるように

進むべき道を
自らの羽で力強く選べるように


「ありがとう」

巡りくる季節でまた会えたら
そう思いながら告げた言葉は

飛び立っていく渡り鳥を
追いかけるように
風にのって飛んでいった






写真=中村風詩人
詩=帆志麻彩