リナ・ラペリーテ展覧会『We Make Years Out of Hours』
寄稿者:中島ゆう子(写真家)
8月に入り、ベルリンは灼熱の夏日は一旦落ち着き始めた。木々の緑が一層濃くなるこの季節にハンブルガー駅現代美術館(Hamburger Bahnhof)で開催されているリナ・ラペリーテ(Lina Lapelytė)の展覧会「We Make Years Out of Hours」へと足を運んだ。
広大な展示室に足を踏み入れると、ほのかに木の香りが漂い、高い天井に響き渡る音に包み込まれた。木製キューブのカチカチとぶつかり合う音、スピーカーから流れる自然音、そして木を積み上げる人々の歌声。かつての駅舎であったこの巨大な空間は、共鳴するこれらの音によって、まるで教会の中にいるような神秘的な空間となっていた。
「生きている記念碑」というテーマを超えて
この展覧会は、時間やケア(思いやり)、そして共存をテーマとした「生きている記念碑」として位置づけられているという。40万個もの木製キューブを、パフォーマーと観覧者たちが手渡しで動かしながら空間を作り変え続けるこのインスタレーションは、確かに一つの巨大なモニュメントのようだ。
しかし、実際にその空間に身を置き、私が強く惹きつけられたのは、そうした壮大なコンセプト以上に、もっとささやかで生々しい「個」の息遣いだった。完成された美しい記念碑ではなく、常に不完全で、揺れ動いているもの。それは展覧会という枠組みを越えて、ただそこで人々が生き、何かを懸命に作り上げようとしているような、手触りのある確かな温度だった。

俯瞰する世界と、人々の営み
入り口に立つと、美しいアーチを描く広大な空間が目の前に広がっている。展示エリアは私たちが立つ入り口よりも数メートル低い位置にあり、まずはその空間全体を上から見下ろす構造になっていた。
眼下に視線を落とすと、たくさんの人々が黙々と木製キューブを積み上げている姿があった。少し離れた高い場所からその光景を眺めていると、ふと、神が人間の世界を見つめているとしたら、こんなふうに見下ろす視点なのかもしれないと、不思議な感覚に陥る。
さらに足を踏み入れてみる。木の香りと、積み上げられるときに生じるカチカチとした物理的な音、そして人々の話し声。それらすべてが混ざり合い、生々しい「人々の営み」を肌で感じる。石のように高く積み上げられた木製キューブの壁の向こうに、原初の世界を生きる人々の根源的な営みさえも透けて見えるようだった。
破壊と再生、そして共存
積み上げられたものはやがて崩され、新たな別の形として積み上げられ、また生まれる。過去に別の誰かが作ったものを崩し、新しく作り変える。さらに別の誰かがそれらを崩し、さらに新しく作る。破壊と再生が延々と繰り返されるこの展示空間は、まるで人生そのものを見ているようだった。
美しい歌声を響かせながら、規則正しく綺麗に積み上げていくパフォーマーたち。一方で、歪に積み上げたり、無作為に崩したりする観覧者たち。その両者の共存が、私たちの生きる世界そのものをありのままに映し出していた。
人生、そして人々の営みとは、こういった物事の積み重なりであり、幾様にも形作られていくものなのだ。その果てしないプロセスを目の当たりにし、美術館を出たあとも、ベルリンの美しい西日と少し冷たい風の中で、心地よい余韻がずっと胸の奥で響き続けていた。
Lina Lapelytė / We Make Years Out of Hours 展覧会開催概要
会期:2026年5月1日(金)〜2027年1月10日(日)
時間:10時〜18時 / 木曜日 10時〜20時 / 土曜日・日曜日 11時〜18時
休館日:日曜・月曜
会場: Hamburger Bahnhof – Nationalgalerie der Gegenwart (Invalidenstraße 50-51, 10557 Berlin)
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