忘れられない海
写真・文=中村風詩人(写真家)
どんな質問でも、今までの一番を聞かれるのは回答するのが難しい。優柔不断という訳ではない。甲乙付けがたいのだ。加えて、旅というものは、その時々の心情や一緒に行く相手でも変わってくる。
海というのは面白いもので、陸上から見ても、海上から見ていても、今の自分を写す鏡のような役割をしていると感じる時が多い。悲しい時に海に行けばさざなみが迎え、嬉しい時に行けば快晴の海、平穏な凪、荒れた感情…… 様々な海の姿は、その時々の自分を見透かされたような気がしてしまう。
さて、忘れられない海だが、思い付く限り3つある。ひとつめは、初めて行った時のヤクタットベイ。これはアラスカにある湾の名前で、その最深部にハバード氷河を持つとても美しいフィヨルドだ。次は、アドリア海。ここはギリシャの西部にあるイオニア海から北上し、イタリアのバーリとアルバニアを両側にして入湾する。湾の最北端に位置する水の都ヴェネツィアは、入港へのアプローチが世界一美しいと言っても過言ではない。湾の東部にあるクロアチアのドブロブニクやスプリット、ザダルなど中世街を思わせる寄港地も言葉を失うほどに美しい。最後に3つ目の海だが、これは日本が世界に誇る瀬戸内海だ。700の島々を持ち、風光明媚な風景やいくつもの世界一に輝く大橋の存在など、その魅力を語ればきりがない。
それぞれアラスカクルーズ、アドリアティッククルーズ、瀬戸内海クルーズが運航しているので、いつかお試しいただきたい。
[写真集『waterline - にっぽん丸の軌跡』 掲載エッセイより]
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写真集『waterline - にっぽん丸の軌跡』
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Profile
中村風詩人 / 写真家
世界一周の旅を始め、今まで80か国以上に渡航し、撮影を行なう。森をテーマに個展や東京都美術館でのグループ展にも出展。著書『ONE OCEAN』では、世界3周分の海の写真をまとめた。年間200の写真展に足を運び、現在600冊の写真集、50枚以上のオリジナルプリントを収集するコレクターでもある。審査員を務める世界旅写真展ではこれまで鬼海弘雄氏、石川梵氏など著名な写真家と共にフォトアート作品の普及に寄与してきた。
