At Sea Day

SEEKING QUIETNESS / 宗玄浩

¥4,300

世界50カ国以上を旅し、撮影を続ける写真家・宗玄浩さんが 「SEEKING QUIETNESS」と題し、"キューバの静寂" をテーマにまとめた写真集 。本紙に収められているのは、2016年、2019年に旅したキューバの日常。当初は陽気でエネルギッシュなキューバを撮影するはずが、実際に街を眺めるうちにキューバがもつ静寂に惹かれるようになったと言います。

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群青色に塗られた古びた一室で、がたつきながらも凜と構える一脚の椅子の姿があった。初めてその写真を見たとき、その際立った美しさに目を奪われた。まるでリングの上で最終ラウンドを終え、闘い抜いた王者の風格さえ漂う。もう一方の表紙の写真を私は著者には無断で「CUBA CROSSING」と名付けている。キューバの混沌とした街並みにおいて、人と人は常に生活している。その中でほんの僅かな出来事で関わり合いを持って生きているはずだ。それは曲がり角で肩が触れることかもしれないし、ご機嫌な者が手を振ることかもしえれない。そんな風に人の人生が他人の人生と交差する瞬間がとても好きだ。このCUBA CROSSINGの一枚は、刹那的な人の関わり合いをまさに体現したものに思えた。

2,3度本書を手に取った読者はおおよそ気づくと思うが、本書はキューバの写真集ではない。これは写真家宗玄浩が旅の中で葛藤し、境地を開いたことを表現した写真集だ。そしてその舞台がたまたまキューバだった、というだけのことである。構成は大きく分けて2章となっている。「喧噪」と題された一章では、著者がキューバを訪れる前に描いていた理想のキューバ、つまり世間一般の広告で形作られた騒がしく賑やかなキューバが描かれている。そして続く「静寂」と題された第二章では、二度にわたる渡航で悟った著者なりのキューバが写されているのだ。それは一般的なキューバのイメージとはほど遠く、森林や高山でみた神々しい現象かのごとく…  静かで厳かな都市のポートレートに他ならない。

私たちは常に情報にまみれて生きている。有意義に生きるには、情報はふるいに掛けられ、個々に適した解釈に変わられなければならない。本書をめくるたびに、その哲学にも似た感覚に啓蒙される。溢れた情報によって植え付けられた画一的なイメージが、実体験を元に自分なりのイメージに塗り替えられた時、おそらくこれらの写真は初めて写真家自身の作品となる。読者の誰しもが苦難にあたったその時、もしかしすると本書は進むべき活路を示してくれるかもしれない。

- 出版元 BEHIND the GALLERY 解説文より


カテゴリー  新本
出版社  BEHIND the GALLERY
刊行年  2020年
サイズ  -
ページ  120ページ
言語  日本語
送料  300円
発送予定  ご注文後1週間以内