02/21/2020
お元気ですか?
あれから何度もお手紙を書こうと思ったのに、あっという間に時が流れてしまいました。こういうところ、相変わらずね。
今ね、スイスに来ているの。こちらは一面雪景色よ。
どうして筆をとったかって、前にあなたが旅先から送ってくれた手紙、そこに書いてあったことを思い出したの。
「もしかしたら僕たちは上に昇っているのかもしれないよ」ってお話。あなたが頭の中でどういう道をたどってその答えにたどり着いたのか、正直あのときはさっぱりわからなかった。
でもね、音もなく静かに白い世界が作られていくのをじっと見ていたら、あなたが何を言いたかったのかわかったような気がしたの。「そういうことだったのね」って、わたし思わず額を窓につけてしまったわ。まるで子どもの頃に戻ったような気持ち。そして、そのことをすぐにあなたに伝えたくなってしまって。
物心ついたときから雨も雪も当たり前のように降っていたし、今まで一度だってそれを疑ったことも、深く考えたこともなかったけれど、わたしがさっき見た世界では、確かに地球は上昇していた。降る雪をみていたはずなのに、昇る地球をみていたの。ゆっくりと、少しずつ、とても静かに。
ふり返ってみると、私たちって会うといつも空の話をしていたね。ちょうど昼と夜が混ざり合うくらいの時間が好きで、その瞬間に一緒にいられる日は特別嬉しかったし、できることならその色をスポイトかなにかで吸い取って持ち帰れたらいいのにって、よく思っていたわ。
あなたは今ごろどんな色の空を見ているのかしら。
よかったら教えてください。
また手紙書きます。